介護業界の動向


介護業界の問題点

介護業界は、高齢化社会の進行による要介護者の急増により、拡大傾向にあります。
介護職従事者の不足は慢性化している状況にあります。

その原因として考えられるのは、まず賃金の低さです。
介護の対象となる高齢者は所得が不安定な人が多く、介護業者は安定した収入を得られません。
政府は介護保険を設けて介護事業を支援していますが、これが経験を積んだ介護職従事者の昇給を阻むことにつながっています。

状況改善の期待

しかし、そんな状況を改善しようという動きも起こっています。
まず、人材不足については、外国人労働者の導入が進んでいます。
経済連携協定に基づいて、フィリピンやインドネシア、ベトナムから労働者を受け入れ、介護福祉士候補生として従事してもらうことが実施され始めています。

また、国内でも失業者対策として介護職に就くことが失業者の受け皿となることを目指しています。
ハローワークや自治体が介護職を紹介したり、研修事業を実施したりしています。

厚生省の賃金改善計画も進んでいます。
介護職員の待遇改善に取り組む事業者に交付金を支給するなど、政府主導の改善計画に取り組んでいるのです。

急激な高齢化社会に対応しきれない社会の状況のために、介護職は人材不足や厳しい労働条件といった問題にさらされていますが、逆に考えると、まだまだ新しい業界であるといえます。
新しいがゆえに問題が出てきているのであって、これから業界全体の経験値が上がることによって、効率のよい運営が編み出されていくのではないかという期待があるのです。

その一例として考えられるのは、オーダーメイドな介護プログラムです。
高齢者の中には、経済的に豊かな人もいます。
この人たちに対応した、サービスの充実した介護プログラムを設定するのです。

高価ではあるが充実とした介護を望む人は少なくありません。
その人たちが望むサービスを提供することによって、介護施設の収入の安定を図るのです。
収入の安定は、職員の収入の安定につながり、施設全体のサービス向上につながります。

そして、介護施設の統合、再編成も進んでいます。
小規模な施設運営ではできるサービスも限られ、利用料も高額になります。
大規模な資本が参入し、合理化されたサービスを大きく展開することによってサービスの単価が下がり、利用しやすくなるのです。

介護保険の導入から約10年、家族は介護がするものという旧来の思考もようやく変化してきました。
業者はサービスを商品として追求し、介護職員は開かれた雇用として働き、利用者は多様化したサービスを選んで利用する、そんなロールモデルができつつあるのです。
もちろんまだ困難は多いのですが、これからの発展も大いに期待できる業界といえるでしょう。